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2025.04.15

ミステリーのすゝめ

はじめまして。モーショングラファーの伊藤と申します。

今回は 「ミステリーのすゝめ」というテーマで注目しているモノをまとめさせていただきました。

親の影響で昔からミステリーを読むことは多かったのですが、
文学部で本好きの友人から「あんまり読んだことない」と言われたことがあまりにも衝撃的で……笑

「ちょっとでも興味を持ってほしい!」という、オタク心で友人に送ったおすすめ本の紹介レポートをベースにまとめました。

確かに、歴史が浅く教科書などにも取り上げられないジャンルで、自主的に読まなければあまり読まないですよね……。

記事を読むことで、1作品でも見たいと思って頂ければ上々。
そうでなくとも、豆知識として楽しんで、知った気になって貰えれば良いなと思います。

なので、興味がある項目だけ飛ばして読んでいただいても構いません。
小話程度の気持ちでお付き合い下さい。

※本記事は2024年8月にスパイス社内報に掲載されたものです。


〇ミステリーは何故、歴史が浅いのか

そもそも、ミステリーとはどういうジャンルなのか。

端的に言うと、
「証拠と論理的推論によって謎が解かれていく物語」
というのが現在では「ミステリー」と定義されています。

この中で重要なのは「証拠と論理的推論」という部分。
人間の長い歴史の中で、論理的・科学的な捜査の体制が整ったのは比較的最近のこと。

人類史上初のミステリーと言われる、エドガー・アラン・ポー作の「モルグ街の殺人」は1841年に発表されたもの。
本作の発表された時期は、ロンドンに専門的な警官隊が整備され、アメリカでも科学的な捜査が注目を浴び始めた頃でした。
そういった世情からの影響を受け生まれたのが、現代まで続いているのがミステリーというジャンルになります。

■モルグ街の殺人 /エドガー・アラン・ポー


人類史上、初めての推理小説。
これ以前にも、近いジャンルの作品はありますが、現代まで続く推理小説の定番の流れを作ったのが本作。
「名探偵が登場」し、「不可能犯罪」を論理的に分析することで事件を解決するという定番は今でも変わっていません。
「探偵シリーズもの」という作品形態も、この「モルグ街の殺人」で名探偵として登場するC・オーギュスト・デュパンシリーズが史上初だと言われています。

現代人が見ると、ミステリーとして甘い部分がしばしばあるようですが、数々のミステリー作家に影響を与えた、いわば祖。
日本初の推理小説を書いた、江戸川乱歩も影響を受けた一人で、ペンネームの『江戸川乱歩』もエドガー・アラン・ポーから文字ってつけられています。


〇世界一有名な名探偵

「名探偵と言えば、シャーロック・ホームズ」と言える程、世界的に有名なシャーロック・ホームズ。
ホームズシリーズの愛好家・研究家のことをシャーロキアンと呼びますが、呼び名がつくほど多数のコアなファンが存在する証拠でもあり、現代でも衰えない人気が伺えます。

何故、シャーロック・ホームズはそれ程までに人気なのか。
その理由は、キャラクター。
シャーロック・ホームズシリーズの名探偵、シャーロック・ホームズは当時、世界初の「諮問探偵」でした。
警察にも軍にも所属しない一匹狼で、頭脳明晰の名探偵。
しかし、科学実験を好み、退屈しのぎの為に推理を行う変わり者で、酒に煙草にコカインまで嗜むダメ人間っぷり。

そんな、唯一無二の人物像が読者を魅了し、相棒であり語り部のワトソン博士や宿敵のモリアーティ、生涯唯一愛した女性であるアイリーンとの人間関係もまた魅力でした。

赤毛連盟・まだらの紐 /コナン・ドイル


当時、雑誌連載であったことから短編が多いシャーロック・ホームズシリーズ。
基本的にホームズとワトソンさえ知っていれば、何処から読んでも大丈夫です。

個人的なおすすめは、「赤毛連盟(赤毛組合)」。
本作の一番いいところは何よりも、話が短くて登場人物が少なくて分かりやすいところ!

海外のミステリーで容疑者が複数いると、誰が誰だかわからなくなりがちですが、
その点、赤毛連盟は登場人物が少なく、場面も少ないので話がとても分かりやすい。
私は小学生で初めて児童文庫のシャーロック・ホームズシリーズを読みましたが、これが一番分かりやすくて読みやすかったです。

また、依頼内容からオチが絶対想像出来ないところもポイント!
シャーロック・ホームズシリーズはちょっと大胆すぎるトリックが多めですが、これも結構な大胆さです。


赤毛連盟は人が死なないので、定番ミステリーをお求めであればおすすめは「まだらの紐」。
こちらも分かりやすくて短く、コナン・ドイル自身が気に入っていたと言われる傑作です。

短編は数話がまとめられた状態で各出版社から出ているので、この2つが入っているものも多くておすすめ出来ます。


〇今でも使われるトリックの原点

皆さんは「叙述トリック」をご存知でしょうか?
叙述トリックとは、読者の先入観を利用してミスリードへ導き、
最後にあっと言わせるようなトリックのこと。

有名な作品で言うと、綾辻行人作の「十角館の殺人」や乾くるみ作の「イニシエーション・ラブ」が、この叙述トリックに当たります。

歴史を辿ればこれまた長いですが、叙述トリックを有名にしたと言われる代表作は、アガサ・クリスティの「アクロイド殺し」。

■アクロイド殺し /アガサ・クリスティ


名探偵ポワロや、ミスマープルといった名探偵を数多く世に出し、ミステリーの女王とも呼ばれるアガサクリスティ。
この「アクロイド殺し」も名探偵ポワロシリーズの作品です。

同シリーズの語り手に代わり、シェパード医師という登場人物が語り手を務める本作。この語り手の違いが生むどんでん返しの結末は今でこそ広く知れ渡っていますが、当時としてはかなり画期的なものでした。

他にも、アガサクリスティは今でも使われる多くのトリックの生みの親。
「ABC殺人事件」や「オリエント急行殺人事件」、「そして誰もいなくなった」はミステリーや小説にあまり触れない人にも有名なタイトルです。

中でも「そして誰もいなくなった」は、本作をオマージュした綾辻行人作の「十角館の殺人」も有名です。


■十角館の殺人 /綾辻行人


綾辻行人作の「十角館の殺人」は、今年、huluオリジナルとしてドラマ化もされた作品で、ミステリーファンの間では、新本格派ミステリーブームの先駆けとなった「館シリーズ」の一作目としても多く知られています。

ネタバレを避けるために多くは語れませんが……
本作は、「小説だからこそ出来たミステリー」だった為、今までその知名度に反して映像化されてこなかった作品。
それがドラマ化ということで、ミステリーファンの中でも多くの話題を呼びました。

私はドラマの方はまだ観ていないのですが、口コミでの評価は悪くないようなので、「活字は苦手だけどドラマなら……」という方は是非ご覧になってみてください。

全てを覆す終盤の一文に、必ずあっと言わされる筈です。


〇現代ミステリー作家紹介

■名探偵の掟 /東野圭吾

執筆した多くの著書がドラマ化・映画化・舞台化されており、現代を代表するミステリー作家の一人である東野圭吾。
著書の中でも、福山雅治が主演を務めた「ガリレオシリーズ」は有名で、2005年に発行された同シリーズの一作「容疑者Xの献身」では直木賞を受賞。
作風は幅広く、SFチックなものから社会派までありますが、共通して絵が浮かびやすくテンポのいい文体で多くの人に受け入れられる作品を書かれています。

数多ある作品の中から、今回は1作品ご紹介します。


デビュー以降、長年伸び悩んでいた作者を躍進させた短編集。
この作品の一番の見どころは、「登場人物たちがミステリーについて文句を言いながら、仕方なしに話の流れに乗ってやる」という、メタい演出をしているところ。
「天下一大五郎(名探偵)が大河原番三(刑事)と共に12の難事件に挑む」という大筋はありつつも、名探偵がキメ台詞を恥ずかしがったり、刑事が密室トリックに辟易したりと、度々登場人物たちは役を演じることを嫌がります。
しかし、読者の意表を突こうとする作者の意思に従って、最終的には自分の役を演じ切ることに。
そして、数々のトリックの先で、最終的には何なら読者の意表を突けるのか。

登場人物たちと作者の行きつく先は必見です。


■氷菓 /米澤穂信

デビュー作兼、最初に受賞した作品がライトノベルという異例のミステリー作家、米澤穂信。
デビュー作「氷菓」が、京都アニメーションによりアニメ化されたことで人気を博し、「黒牢城」で直木賞を受賞。今年7月からは「小市民シリーズ」がアニメ化。
作風としては青春ミステリーを多く執筆しており、著者自身が『それらに通底するテーマは「全能感」であり、思春期におけるその揺れ動きや変化の過程を書きたい』と述べています。
他にも、綾辻行人作/十角館の殺人をオマージュした「インシテミル」など、青春ミステリー以外の作品も多く、直木賞受賞作品である「黒牢城」は歴史小説でありミステリーでした。


米澤穂信のデビュー作で、第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラ―部門の奨励賞受賞作。
この作品の見どころは、日常の些細な謎が解き明かされていく痛快さと、思春期の揺れ動く心情。
そして何より、「氷菓」というタイトルにもなった33年前の事件、それが解き明かされた先にある感動の真実です。

物語は、主人公である折木奉太郎が古典部に入部し、同級生の千反田えるに出会うところから始まります。
「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければならないことは手短に」をモットーとする折木奉太郎は、姉の頼みで廃部寸前の古典部に入部。
部員は0だと思われていた古典部ですが、一身上の都合により千反田えるが先に入部していました。
折木は千反田の好奇心に誘われ、不本意ながらも校内で起こる数々の事件を解決。
そして千反田は遂に、自身が古典部に入部するきっかけとなった、古典部文集「氷菓」に隠された真実と忘れてしまった記憶を解き明かして貰うべく、折木に依頼します。
古典部員たちは真相解明へと乗り出すことになりますが……。

文庫本でも200ページ程度なので読みやすいですが、兎に角アニメのクオリティが凄いので、アニメ版もおすすめです!


〇現代ミステリー作品紹介

■ミステリとい言う勿れ /田村由美


菅田将暉主演で月9ドラマ化・映画化もされたミステリー漫画。
作者の田村由美さんは「BASARA」や「7SEEDS」を描かれた方で、今時の絵柄に慣れていると少し抵抗を感じるかもしれませんが……
映像化すると、尺の都合上セリフのカットや改変が発生するので、是非原作も読んでほしい一作です。

作者は「ミステリじゃないです」と主張し、タイトルも「ミステリと言う勿れ」と付けられていますが、分類は間違いなくミステリー。
話の大筋は、天然パーマの大学生久能整が、巻き込まれる形で様々な事件に関わり、謎を解いていくというもの。
警察や同級生など、巻き込まれるきっかけは毎回違うものの、どんな状況でも主人公がとにかく喋る喋る。仏頂面のまま、事件に関係する話から雑学、自分の哲学まで、ページが主人公の語りで埋まることもある程に良く喋ります。
多弁すぎて、登場人物たちから不況を買うことも屡々。

理屈っぽくも人間臭い主人公と、登場人物たちの人間模様。そして、被害者や加害者に向けられる主人公の言葉の数々に、胸を打たれる作品です。


■薬屋のひとりごと /日向夏


小説投稿サイト「小説家になろう」発のミステリーライトノベル。
原作がWeb小説であるため派生媒体の多い作品で、分かりづらさはありつつも間口の広いのが良い作品です。

見どころは、当時の中国文化や時代背景を生かしたトリック。
話のあらすじは、「架空の中国風帝国を舞台に、後宮に努める女官である主人公が、薬学の専門知識で王宮内の謎を解いていく」というもので、後宮の設定などはある程度ファンタジーで作られている部分もあります。
しかし、トリックで使われる建造物や道具、主人公の使う薬草などは、史実に則って描かれており、ファンタジーとリアルのバランスが絶妙で面白いです。

また、個性豊かで魅力的な登場人物も多く、そんな周囲に翻弄されながらも、ふてぶてしく生き抜いていく主人公も見ていて楽しい作品です。

原作のWeb連載は現在不定期な連載ではありますが、Web版が加筆修正されたうえで順次書籍化中。
また、コミカライズ版も2種類あり、それぞれで描写や展開が少しずつ違うようです。
アニメ版はそれぞれの要素を混ぜて作られているようで、既に2期の制作も決まっている人気ぶり。

条件別のおすすめ媒体としては……
・取り敢えず触れてみたい人→無料でいつでも読める、Web小説
・一番手軽に観たい人→話が整理されて楽に観れる、アニメ版
・美麗な絵柄で観たい人→ビッグガンガンコミックスorアニメ版
・原作準拠が良いけど、活字は避けたい人→サンデーGXコミックス
・一度触れてみてハマった人→書籍化小説

気になった方は、是非、ご自身の挑戦しやすい媒体で観てみてください!


〇最後に

他にも好きな作家・好きな作品は沢山ありますが、今回はこの辺りで。
ご清覧いただき、ありがとうございました!

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